止る(とまる/とめる)・Si ferma / Lo fermo 

とめる とまる

2005年、大学一年の時から石を扱い始めて6年目だった。


手は割と早く動き制作スピードは早めだった。
石という通常は扱う事のない素材に四苦八苦して汗のような苦労を形にしてそれを讃えるという
スポ根のような感覚がうっすら漂う環境を軽蔑視するという、若かりし頃。

頭の中には常に止む事のない思考が蠢き、
その思考の形態を追い、追い付かず、必ず現実の物質の石は虚しく中途半端なやりかけに終わった。

止る 迷彩
止る – 迷彩・Si ferma / Lo fermo – mimetica

現れかけた形態は無惨に消える。

止る – どんぐり・si ferma / lo fermo – ghianda

漫画の吹き出しマークは空白で、
ストーリーもセリフも全て消えた。
残った吹き出しマークは用途を忘れ去られて、
違うものとして認識された。
『こいつはどんぐりに違いない』

タイトルについて -止めると止まる

“止まる””止める” – “si ferma””lo fermo”
この二つの語は他詞と自動詞であり、
どれだけ製作者が能動的かであるかを示すものであったと思う。
どちらとも言えずに、結局どちらでもない”止る“と、
日本語あるまじき送り仮名でタイトルとした。

宙ぶらりんになったままだったこの違いは、
出産時に再び思い出された。
“産まれる””産む”そのどちらにも違和感があった。
理由は出産する母と生まれる子と、
双方の協力がないと誕生が叶わぬという事。
うちの娘は出産時に居眠りをしたのですよ…。
それでは生まれてこないと、
看護師さんにゆっさゆっさ揺らされて起きましたとさ。

という事は、
大理石に生命があるとでも思っていたのかね、私は?
(多分そう。)

とめる とまる

止る(とまる/とめる)・Si ferma / Lo fermo

2005年 サイズ可変
大理石, インク, 鉛筆