皮膚上の異常・Escrescenza sulla pelle

皮膚上の異常 escrescenza

完全にトラウマ – 皮膚

小学生の時、スイミングクラブに一緒に通っていた友達がいた。

頬のえくぼが似合う色白、天然パーマの子だった。

ある夏、彼女は家族で海に行ったらしい。

色白の彼女がすこしだけ日焼けした顔をしていた。

スイミングへは、家であらかじめ水着を着て、上に服を着てからいつものバスに乗り込むのだった。その方が着替えが楽なので。

その日もいつものように、バスから降りて更衣室で上に着ている服をさっと脱いでいたら、

その友達が日焼けのことについて何かを言っていた。内容は覚えてない。

今覚えているのは、彼女の背中をびっしり、直径数ミリの水膨れが一面覆っていたという事。

色白さんが日焼け止めを塗らないでいきなり強い直射日光に当たると、火傷をしてしまうのだが、

日焼け止めは、当時子供に塗るという習慣はなかったように思う。

それにしても、どうやって一面水膨れだらけの背中に水着を着たのか、昨晩どうやって布団で寝たのか、、

緩衝材のプチプチ並みの強度を誇るとでもいうのだろうか、水膨れは。

人生初の蕁麻疹

大学生になってから、初めて蕁麻疹になった。

夜に自分の体にまだら模様を描きつつ増殖するる赤い丘疹は不気味すぎた。

しかも、蕁麻疹が何かというのを知らなかった。ほぼパニック。

なんとか、夜間でも受け付けている電話相談にたどり着いて、当直のお医者さんに相談できた。

次の日にはその同じお医者さんに観てもらい、薬を出してもらってすぐに引いた。

無事に、その翌日のパンテラコンサートに行けた。(あれが最後の日本公演になろうとは..!)

皮膚の恐怖を正視してみる

小学生の時の友人の背中のブツブツは、本当に衝撃で、

その夜は眠れなかった。確か次の日も。不眠に悩む小学生って存在しますよ。

(別の機会には、眠りに落ちる瞬間を知りたくて、眠る瞬間に意識を保って不眠症にもなった。)

似ても似つかない浴衣の柄でさえブツブツに見えて、「気持ち悪い!!」と喚いた。

大学生になってからの蕁麻疹は、気持ち悪い対象が自分の皮膚なんだから、

それは恐怖の再来でしかない。

しばらくして落ち着いてから、なんでそんな事が恐怖なのか、改めて吟味するためにブツブツを制作した。

人肌に近い色と質感を考え、テラコッタを選択。

作業場に机と椅子を置いて、ひたすら内職のごとく色々なブツブツを制作。

水膨れと水膨れが合体して変な形になっているものも再現した。

様々な大きさで。

執拗な小さな反復は大切だ。

小さいものは一番沢山作った。

自然が成す光景、大地という皮膚

飛行機でシベリア上空(2022年現在飛ばないエリア)を通る時、

尾瀬の湿原の上空からの映像、

モンゴルの水のあるエリアの植生、

南米のどこかの水の蛇行、

そういった自然の成す不思議なパターンを思う。

テラコッタを地面に並べながら、私の意思により置かれる位置と、

自然がそうなるべくして作りだす模様とを比較した。

結局は、皮膚上の異常も自然現象ではないか。

なので、なるべくそれぞれの粒々がそこにあるべくしてあるように心がけた。

最終的にはそういう私の意図による位置なんだけれども。

フォビアはフォビア

恐怖を吟味したものの、克服できるものでもないし、しなくてはならないものでもない。

黒板を爪で引っ掻く音がぞぞっとするのを、何度も繰り返すと大丈夫になるのとは訳が違う。

今でも天然痘患者の写真(リンク先閲覧注意)は見るとまずい。

ただし、まずい、ヤバい、と思いつつ見てしまう変な衝動はある。

そんな思い出のブツブツは、現在2つだけ手元にある。

最初はお香立てとして活躍し、現在は小銭入れとなっている。

皮膚 テラコッタ
二つのテラコッタの隙間にはお札も入る。

一種の平和的解決とでも言おうか。

皮膚上の異常が、常に身近な存在となっている顛末。

皮膚 異常 escrescenza

皮膚上の異常・Escrescenza della pelle

H7W250D400(cm)可変 2000年
テラコッタ